将来計画及び運営方針 313
5-4 計算科学研究センター
2005年1月現在の計算機システムの概要を下図に示す。図の左側は2000年3月に導入されたスーパーコンピュータ システムで,図の右側は2003年3月に更新されて山手地区に設置された汎用高速演算システムである。
SGI SGI2800,Origin3800
cco2k1 32CPU cco3k1 128CPU cco2k2 32CPU
cco2k31 128CPU
日本電気
TX-7 64CPU
File Server
Frontend ccfep1 ccfep2
富士通 VPP5000 30PE 日本電気 SX-7 32CPU
汎用高速演算システム
スーパーコンピュータシステム
機構ネットワーク CISCO Catalyst
高速シミュレーション 日立 SR8000 6CPU
システム構成図
スーパーコンピュータシステムは,富士通製 V PP5000 と S GI 製 Origin から構成されている。V PP5000 は 1 C PU 当 たりの最高演算性能が 9.6 Gflops のベクトル演算装置30台から構成され,各 C PU に 8 ∼ 16 GB の主記憶装置をもつベ クトル並列計算機である。一方,S GI Origin は 1C PU 当たりの最高演算性能が 0.6 ∼ 0.8 Gflops のスカラー演算装置 320 C PU から構成され,1 C PU 当たり 1 GB の主記憶をそれぞれの C PU から共有メモリとしてアクセスが可能な分散共有 方式の超並列計算機である。V PP5000 では高速なベクトル演算能力を活かした大型ジョブの逐次演算処理や8台以上 のベクトル演算装置を使った大規模なベクトル並列演算が可能である。Origin2800/3800 は Non Uniform Memory A ccess
(NUMA )方式と呼ばれる論理的な共有メモリ機構を有する。NUMA は主記憶装置が各 C PU に分散して配置されてい
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るため C PU から主記憶へのアクセス速度が非等価ではあるが,利用者プログラムから大容量のメモリを容易に利用す ることができるので,大規模な並列ジョブの実行が可能となる。高速シミュレーションシステムの日立製 S R 8000 は, 主に機構内における利用を目的として運用されている。
一方,2003年3月に導入された汎用高速演算システムは,NE C 製 S X -7 で構成される主システムと T X -7 で構成され る副システムとから成る。NE C S X -7 は 1 C PU あたり 8.8 Gflops の最高演算能力を持ち,256 GB の共有メモリに結合 された 32 C PU の演算装置から構成され,総合演算性能 282.5 Gflops の共有メモリ型ベクトル計算機である。また,T X - 7 は 4 GB のメモリを持ち最大 4 Gflops の演算性能を有する C PU を32台搭載したノードを基本単位として構成されて いる。本システムは2ノードから成り,合わせて 64 C PU,256 GB ,256 Gflops の総合性能を有する分散メモリ型スカ ラー計算機である。このうち主システムは高速演算,大容量メモリを活用した大規模分子科学計算に用いられ,また 副システムは分子科学計算に加え,ホモロジー検索を主としたバイオサイエンス分野での利用に供されている。
2004年度も144の研究グループの550名にもおよぶ全国の利用者に共同利用施設として広くサービスを提供し,計算 科学分野の中核的拠点センターとしての役割を果たしている。最近の大規模計算への要求に答えるために,2004年4 月から運用の抜本的な変更を行い,これまでと比較してはるかに高度で便利な計算環境の整備を行った。変更の主な ポイントは,
(a)C PU 時間とメモリーの上限を大幅に緩和して,大きな分子の電子状態計算を可能にした。また,デスク容量の上限 を大幅に緩和して,分子動力学計算等の巨大データの保存を可能にした。
(b)大規模計算を高速処理するための並列計算キューを大幅に拡充した。
(c)これまでの特別申請を簡素化した特別利用キューを新設し,申請時に簡単な説明を追記するだけで,360時間(16- 32 cpu,128 GB メモリー)もの長時間ジョブを可能にした。
(d)アプリケーション利用キューを新設し,機種に依存しない W eb からの標準入力で,量子化学計算で最も利用頻度が 高い Gaussian プログラムの効率的実行を初心者にも簡便に実行可能にした。
これらの変更により,これまでと比較して格段に大規模な計算が実行できるようになった。たとえば,HF /6-31G(d) 法で,原子数 338,基底関数 4,238 の分子系の S C F(21 回)+force の計算が T X -7(16cpu)を利用して9時間足らずで 終了するので,巨大な分子の理論研究も可能になった。今回の変更によって大規模な計算ばかりでなく,小規模な計 算も効率的に実行できるのも特徴である。次年度にスーパーコンピュータを更新することにより,2006年4月からは さらに巨大な分子系の大規模計算を可能にする計算環境を提供する予定である。
計算科学研究センターには,超高速コンピュータ網形成プロジェクト(NA R E GI)のナノサイエンス実証研究のため に,2004年3月から総理論演算能力が 10 T flops の大型計算機システムが導入されている。アプリケーション開発拠点 としての研究推進はもとより,事務局と計算機システムの運用という重要な役割を果たしている。
分子科学ばかりでなくバイオサイエンス分野の計算科学の唯一の全国共同利用センターとして,計算環境の提供ば かりでなく,分子科学を基盤とする計算科学の裾野を大きく広げて,国際的に先導的な計算科学研究発進の中心拠点 としての進展を目指して運営を進めていく。このために,以下のことを現在計画している。
(1)高速パソコンクラスターの最近の普及によりセンターへの期待と役割がこれまでとは大きく変化してきている。 これに答えるために,通常の研究室レベルでは不可能な大規模計算を実行できる計算環境の整備と強化を引き続き進 めて,来年の3月にスーパーコンピュータを更新することにより,これまでと比較して格段に巨大な分子系の理論研 究も効率よくできるようにする。このために有用な計算プログラム,分子モデリングプログラム,動画像処理プログ ラム等を強化していく。また,超大規模計算によって計算科学のブレイクスルーや新展開が期待できる特徴ある研究
将来計画及び運営方針 315 計画には,計算資源を優先的に大きく解放する方法を検討していく。
(2)物質科学はもとより生命科学分野でも,分子科学を基盤とする計算科学とコンピュータシミュレーションは,実 験に並ぶあるいはそれ以上に有力で強力な研究法として今後ますます重要になる。計算科学研究分野での新機軸を先 導的に展開するために,これまでのスーパーコンピューティングやグリッドコンピューティングの豊富な経験を活か して,国内の代表的な「理論化学研究会」と「分子シミュレーション研究会」の協力のもとに,分子科学研究所に本 年度新設された計算分子科学研究系を中心にして「巨大計算に基づいた分子・物質シミュレーションナショナルセン ター形成」の実現を目指す。このためのシンポジウムや研究会を開催して人的交流を促進すると同時に,内外の研究 者の支援のもとに若手研究者や大学院生の育成のための教育プログラムを進めて,計算科学の裾野を拡げる。また,ナ ショナルセンターとして大きく機能していくために,NA R E GI プロジェクト「ナノサイエンス実証研究」に代表され る大型プロジェクトの推進ばかりでなく,国内に加えて多国間共同研究など国外の研究グループ(特にアジア地域の 研究者)との国際共同研究支援のあり方を検討していく。
本年度の外部評価でも指摘されているように,これらの実行にはセンターの人的パワーの補強が強く求められてい る。